青森

本州最北端の地「青森」。かつては、北海道の玄関口だった。
「上野発の夜行列車降りたときから♪青森駅は雪の中…」
石川さゆり(誰それ?なんて言う人も多くなった)の演歌にもあるように
夜行列車「ゆうづる」は、早朝の青森駅に滑り込む。
駅に降り立つと、吐く息が白く凍えそうだ。
何とはなしに、来るところまで来てしまった。そんなふうに感じさせる風情があった。
しかし、今は青函トンネルが出来て青森駅に降りることなく通過する人も多くなった。
事情は、海を挟んだ函館も同じだろう。しかし、青森はいい。
春の弘前城。
初夏の十和田・奥入瀬。
下北半島には、霊山・恐山があり、
津軽半島は竜飛岬が風のコリドー(回廊…これもちょっと古い)だ。

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青森県内は、みどころが多い。そのいくつかを紹介しよう。

その一 十和田湖・奥入瀬渓流

十和田湖畔は、四季折々様々な顔を見せてくれる。
特に新緑の季節と紅葉の季節の十和田の美しさは、筆舌では表しがたい。
新緑の季節、湖畔を巡るバスが緑のトンネルを駆け抜ける。
新緑を抜けてくる日差しがあたりを薄緑に染める。
バスから外を見やると青く澄んだ十和田の湖面が輝いている。まるで、別世界を旅するようだ。
十和田は、標高があるためか、夏になっても葉の色が濃くならない。
いつまでも爽やかな薄緑色をしている。
道の両側からは、その薄緑の葉をたっぷりと茂らせた木がせり出して道路を覆う。
その透明感あふれる薄緑の光の中を進んでいくバスを想像して欲しい。
その中にもしあなたがいたら…。十和田に行くならぜひ湖畔に宿をとって欲しい。
夕食後は湖畔に出て風に吹かれよう。空を仰ぐと満天の星。
翌日快晴だったら、奥入瀬渓流の沿って伸びる遊歩道を散策しよう。
川のせせらぎを聞きながら木漏れ日の中を歩くと、本当に心の中が洗われていくようだ。
ただ、自動車道が遊歩道の脇を通っているため、時折、車の音と排気ガスが漂ってくるのが残念だ。
遊歩道は、全長14キロ程度、3.4時間かけて奥入瀬の自然を満喫しよう。
遊歩道を散策するときは歩きやすい靴を履こう。
荷物は、湖畔の子の口(ねのくち)から、奥入瀬渓流の終点まで運んでくれるサービスがあるから利用しよう。

十和田湖に入るには様々なルートがある。
盛岡からバスで2時間15分。青森からバスで3時間。弘前や三沢からバスで2時間15分。

その二 恐山

下北半島(地図で見ると右側にあるまさかりのような形をした半島)には日本三大霊場として名高い恐山がある。
東北本線野辺地駅で電車を降り、そこからさらに北に伸びる大湊(おおみなと)線に乗り換える。
そしてその大湊線の終点にむつ市がある。むつ市には、終点の駅で感じるさい果て感が漂う。
これから、霊場恐山に向かうということならば、その気持ちはますます高まる。
むつ市から恐山へはバスを利用する。
市街地を抜け恐山街道と呼ばれる原生林を抜けるとエメラルドグリーンに広がる宇曽利湖が見える。
エメラルドグリーンといっても硬質な緑青を思わせる色だ。
バスを降りると辺り一面に漂う硫黄臭がかすかに鼻を突く。
しばらく歩くと、テレビで何度か見たことのあるあの霊場が広がる。
今にも倒れてしまいそうな木造の古い湯治場の建物。石灰色の岩肌。着物を着せられた地蔵菩薩。
そんな中を進んでいくと本堂地蔵堂がある。
宇曽利湖畔に向かうと、賽の河原や血の池地獄といったおどろおどろしい立て札が立っている。
風雨にさらされてぼろぼろになった石灰質の岩肌の向こうには、宇曽利湖の緑の湖面が広がる。
その風景は、妙な静寂感がある。ふと、ここがこの世とあの世の境なのかなあ。そんな気もしてくる。
何か特異な体感を味わえるところだ。

恐山を巡ったあとは、麓の薬研温泉か奥薬研温泉で宿をとろう。
近くを流れる大畑川の川沿いをぶらりと散歩するのも気持ちがいい。この世に生きている実感がわく。
翌日、時間に余裕があったら本州最北端の大間崎に行ってみよう。
本州最北端といっても土産物や干物などを売る店が何軒かあるだけで、
何か特別な物があるわけではないが、最〜端と名の付くところには言っておいた方がいい。
なにとはなしに記憶に残るものだ。
帰路は、ちょっと変わったコースを味わいたいなら佐井村から出ている青森港行きの船に乗ってみよう。
奇岩が群立している有名な仏ヶ浦を船上から眺めることが出来る。
しかし、少し風が強い日は避けた方が無難である。
定期船は意外に小さいので海が少ししけると、大きく揺れる。波が自分の目の高さより高くなるときもある。
そうなると、仏ヶ浦の景色どころではない。死んだ方がましだと思うほど苦しい。
港について地面の上を歩くと酔った時のように全く平衡感覚が無くなっているのに気づく。
翌日の朝も目が回るという体験もいいかもしれない。

その三 津軽半島

津軽半島を回るなら、車があった方が断然便利だ。何はともあれ津軽半島の最突端竜飛崎に行ってみよう。
そこは強い海風が吹き抜ける風の岬だ。
竜飛崎までは、青森市を起点にすると青森湾沿いを北上する松前街道を利用することになる。
距離的には最短なので時間に余裕のない人はこのコースをおすすめする。
時間にゆとりがある人(丸一日を津軽半島探訪に費やせる人)は、弘前を拠点にするのもいいだろう。
弘前市街を抜けると左手に林檎畑を隔てて岩木山が見える。
岩木山は津軽富士の名をいただくことから分かるようにその山容が美しい。
ただ、車を運転しながら脇見をするのは禁物。ちゃんと車を止めて、じっくりその山の姿を味わおう。
五所川原を過ぎると、太宰治の生家として有名な「斜陽館」がある。
津軽は太宰の小説「津軽」の舞台になった地であるが、太宰ファンなら「斜陽館」は一度訪れたいところ。
さらに北上して十三湖のあたりまで来ると、道が分かれる。
右側に進路を取ると「やまなみライン」だ。しかし、ちょっと冒険して、左側に進路を取ろう。
日本海に出たらそのまま北上するのだ。日本海を見ながらのドライブも気持ちいい。
途中、津軽海峡川の三厩(みんまや)に抜ける林道がある。
原生林の中を小一時間ほどで三厩に達する。その間、ほとんど対向車にすれ違うことはない。
なにしろ、車一台が通れるほどのせまい未舗装の道があるだけなのだ。
車が故障したらなんて想像すると、ゾッとする。冒険心の強い人以外はあんまり勧めないコースだ。

さて、津軽最北の竜飛崎だ。ここは、ただ、海からの強い風が吹いている。
風力発電のためなのか風車が回っているのが何となくもの悲しい。
お腹がすいたら、途中「ウニ丼」とかいた看板があるお食堂に入って、贅沢にウニ丼を食べよう。
そして、いつも思うことをまた反芻しよう。最北端てどこもこんなもんだな…と。

次回は、ねぶた祭りと津軽弁について
それから、青森の温泉案内もしようと思う。また来てね。

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